施設内訪問看護とは?一般的な訪問看護との違いを解説!
2025/08/06
投稿者:編集部
施設内訪問看護とは?一般的な訪問看護との違いを解説!
施設内訪問看護とは、住宅型有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、施設内に暮らす利用者へ看護ケアを提供するサービスです。在宅訪問看護との違いは、移動先が利用者の自宅ではなく、同じ建物内の各居室を巡回する点にあります。
利用者の医療処置や生活支援を行いながら、介護スタッフや医師、リハビリ担当者など多職種と協力しやすいことが特徴です。一方で、施設の方針や緊急時対応など、独自のルールを把握したうえで柔軟に動く必要があります。
本記事では、施設内訪問看護の概要や働き方について詳しく解説し、メリットやデメリット、必要なスキル、キャリアアップまで幅広く取り上げます。初心者でもわかりやすい内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。
施設内訪問看護と在宅訪問看護との違い
施設内訪問看護が在宅訪問看護とどのように異なるのか、訪問先や働き方から整理して理解を深めましょう。
一般的な訪問看護は利用者の自宅へ訪問し、一軒ごとに移動する形で看護ケアを行います。一方、施設内訪問看護は同じ建物内に住む複数の利用者を担当することが多く、建物のフロアを移動して各居室に伺います。移動時の負担は軽減されますが、一度の勤務時間内に多くの利用者を診るため、効率的な時間配分が重要です。
施設ごとに医療依存度の高い利用者が集まっているケースもあり、突然の体調変化に素早く対応する必要があります。緊急時にはチームと連携し、適切な処置を取る判断力も求められます。
訪問先と環境の違い
施設内訪問看護では、住宅型有料老人ホームやサ高住などの居室を移動しながらケアを提供します。移動距離が少ないため業務効率が上がりやすい反面、同じ建物内に複数の利用者がいるため、短時間で複数名を担当する必要があります。
在宅訪問看護では自宅を一軒ずつ訪問するため、移動時間や交通手段の確保が課題になりがちですが、利用者ごとに環境が大きく違うため、一人ひとりに合わせた独自のアプローチを取りやすい特徴もあります。
看護内容と求められるスキルの違い
一般的な在宅訪問看護では医療処置と同時に、利用者の生活空間全体をアセスメントし、家族のサポートや環境調整を行うことが多いです。一方、施設内訪問看護では多職種連携がしやすく、医師や介護スタッフと協力しながら対応を進めるケースが多くなります。
また、施設内にはターミナルケアが必要な利用者や医療依存度の高い方がまとまって入居している場合があるので、急変時の対応力や専門的な医療処置の経験が一層求められます。
一日の流れ・働き方の違い
在宅訪問看護では移動時間を含めたスケジュール管理が重要となり、しばしば外出先で時間を調整する場面もあります。一方、施設内訪問看護は建物内で連続して居室を回るため、勤務前に一日の訪問順序や予定をまとめられる利点があります。
ただし、施設のプログラムや利用者のイベントスケジュールに合わせる必要があるため、臨機応変な調整スキルも欠かせません。チーム内で情報共有を密に行いながら、的確に看護業務を進めることが求められます。
施設内訪問看護の主な仕事内容
施設内訪問看護では、多岐にわたるケアを提供することが特徴であり、利用者の生活環境や医療的ニーズに応じた幅広い業務が求められます。
同じ建物内の各利用者の健康状態を的確に把握し、日々のバイタルチェックから高度な医療処置まで対応します。施設管理者や介護職員と連携しながら、個々の身体状態や疾患の経過を見極める点がポイントです。
さらに、施設ならではの行事やリハビリ活動に合わせて看護計画を調整する場合もあり、利用者の快適な生活をサポートするうえでの柔軟な対応力が求められます。
対象となる施設の種類
施設内訪問看護の訪問先には、住宅型有料老人ホームや特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などがあります。各施設の特徴や運営方針が異なるため、対象となる利用者の医療依存度や介護度も多彩です。
施設の種類によっては、終末期ケアや認知症ケアを重点的に行うところもあり、求められる専門性が変化します。勤務を検討する際は、それぞれの施設の方針や看護体制を確認することが大切です。
医療依存度が高い利用者への対応
施設内訪問看護では、人工呼吸器管理や経管栄養、中心静脈栄養など高度な医療行為を必要とする方を担当する場合があります。そのため、急変時に迅速に判断して対応できる能力が重視されます。
加えて、定期的なモニタリングや生活支援を行いながら、医師や管理職との連携でケアプランを調整するケースも多く、利用者の安心と安全を確保するための総合的な看護力が必要とされます。
介護スタッフや他職種との連携
施設内訪問看護の現場では、介護スタッフやリハビリ職、管理栄養士、医師など多職種が同じ場所で働いているため、連携が取りやすい強みがあります。利用者の状態に合わせた情報共有やケア計画のすり合わせがスピーディに行えます。
ただし、日常的なケアから緊急対応まで広範な業務に携わるため、職種間の意思疎通を円滑に進めるコミュニケーションスキルが不可欠です。チームワークを円滑にするためにも、積極的な情報発信が求められます。
施設内訪問看護のメリット
施設内訪問看護では移動の負担が少ないことや、チーム連携のしやすさなど数多くのメリットがあります。
在宅訪問看護と異なり、移動が建物内に限られるため、比較的時間や身体的負担を抑えることができます。その分、利用者のケアに集中しやすく、一人ひとりと向き合う時間を取りやすい点は大きな魅力です。
また、複数のスタッフが常駐している施設では、困ったときにすぐ相談できる体制がある場合が多く、安心して業務に取り組むことが可能です。
移動負担が少ない・ケアに集中しやすい
建物内での移動がメインのため、天候や交通状況などに影響されにくくスケジュール管理が容易です。その結果、利用者とのコミュニケーションや看護ケアの時間をより多く確保しやすくなります。
看護師自身の体力的負担も軽減されるため、業務後の疲労が少なく、安定したペースで継続して働くことができるメリットがあります。
チームとのコミュニケーションが取りやすい
同じ施設内には、介護スタッフやリハビリ職、医師などが常に近くにいるため、利用者の状況に応じて即座に情報共有を行えます。頻繁に顔を合わせられる分、チーム間の意思疎通が円滑になりやすいです。
在宅の場合だと、多職種が一同に集まるのが難しい場面もありますが、施設内では業務の合間を活用してミーティングやカンファレンスを行いやすく、利用者のケアの質を高めることに繋がります。
夜勤・オンコール対応の仕組みが整っている場合も
施設によってはオンコール体制や夜勤シフトを分担する仕組みが整備され、急な利用者の体調変化にもスムーズに対応できます。複数のスタッフで役割を分担することで、看護師一人への負担が過度にならないよう工夫されているところもあります。
また、24時間体制でスタッフを配置している施設では夜勤数が限定的となる場合もあり、ワークライフバランスを取りやすい職場環境となることがあります。
施設内訪問看護のデメリット
メリットがある一方で、緊急時対応や施設独自のルールなど、施設内訪問看護ならではのデメリットも存在します。
複数の利用者をまとめて担当するため、急変が重なった場合には大きなプレッシャーを感じることもあります。特に施設によっては、夜間の急変時に限られたスタッフ数で対応しなければならないケースもあるため、迅速かつ適切な判断が求められます。
施設独自のマニュアルや運営方針に従って業務を進める必要があるため、慣れないうちはルールを把握するまでの負担がかかる場合があります。
緊急時のプレッシャーとオンコール
施設内で複数名の利用者が急変する可能性があるため、緊急時の負担は看護師や施設スタッフに大きくのしかかります。迅速な対応を求められる一方で、限られたスタッフ数で対応しなければならない場面も考えられます。
オフタイムであってもオンコールに対応しなければならない場合には、精神的な負荷がかかることがあります。施設の規模や体制によってオンコールの頻度は異なるため、自分に合った環境かどうか確認することが重要です。
施設独自のルールや多忙さへの適応
施設によっては独自のルールやコンプライアンスが存在し、それに慣れるまで時間がかかることがあります。特に大規模な施設では組織の一員として業務を円滑に回すための調整が必要になるでしょう。
また、多職種が一箇所に集う分、相談しやすさの反面で、自分の担当業務以外のサポートを求められる場合も少なくありません。こうした多忙な環境に対応するためには、臨機応変な心構えが求められます。
施設内訪問看護で求められるスキルと心構え
利用者一人ひとりと向き合うには、基礎的な看護技術だけでなく、状況把握やコミュニケーション力が不可欠です。
施設内訪問看護では、複数の利用者の健康状態を素早く見極め、適切な処置やアドバイスができるように準備しておく必要があります。日々の記録や情報共有も重要で、全体像を把握しながらケアを進める力が問われます。
また、チームで働く環境なので、良好な人間関係を築くためにも相手の意見を尊重しながら連携し、互いに足りない情報を補い合う協調性が大切です。
アセスメント力・迅速な判断力
施設内には医療ニーズの高い方が多く、利用者全員の状態を短時間でチェックする必要があります。そのため、的確なアセスメント力とスピーディな決断力は欠かせません。
例えば、バイタルの変化を見逃さず、兆候を早期に捉えたうえで医師へ報告や処置を行うなど、施設ならではの多人数管理をこなす力が求められます。
コミュニケーション能力と協調性
施設内の看護師は、介護スタッフやリハビリ職、場合によっては利用者の家族とも日常的にやり取りします。そのため、相手の状況や専門性を理解し、わかりやすく情報を伝えるコミュニケーション力が必要です。
また、複数の職種がチームを組んで利用者を支える形になるため、互いの役割を尊重し合いながら共通の目標に向かって連携する協調性を高めていくことが大切です。
施設内訪問看護の求人とキャリアアップ
施設内訪問看護に興味を持った際に、求人の選び方や今後のキャリアパスをどのように考えればよいかを紹介します。
近年、介護施設の拡大や高齢者人口の増加を背景に、施設内訪問看護の求人は増加傾向にあります。働く場や施設の特色をよく理解し、自分のキャリア目標やライフスタイルに合った場所を選ぶことが重要です。
施設ごとに看護体制やスタッフの配置状況は異なるため、募集要項や見学時の雰囲気を確かめつつ、職場選びを慎重に進めていきましょう。
求人選びのポイントと志望動機の考え方
まずは施設の規模や運営方針、訪問看護体制などをしっかり把握することが大切です。自分が注力したい分野や学びたい技術が身につく環境かどうかを検討し、施設内訪問看護ならではの魅力を志望動機に含めて伝えると良いでしょう。
面接時には、医療処置の経験や緊急時対応の実績を具体的に示し、施設が求める人材像と合致していることをアピールするのもポイントです。
給与水準・待遇とスキルアップの可能性
一般的に、在宅訪問看護と大きく差があるわけではありませんが、施設の規模や母体となる法人によって給与水準は変わることがあります。夜勤やオンコールを担当した場合は手当がつくケースも多いです。
また、施設の研修制度や外部セミナーの受講支援などを活用すれば、さらに専門性を高められる機会があります。定期的にスキルアップの機会を得られる職場を選ぶと長期的なキャリア形成にもプラスになります。
管理職を目指す道
施設内でキャリアを積み重ねると、看護リーダーや管理職へとステップアップできるチャンスがあります。組織をまとめて運営に関わる立場となるため、マネジメント能力や部下育成のスキルが必要となってきます。
管理職になれば看護業務だけでなく、施設全体の経営方針に関わる部分も相談されるようになり、看護師としての視野がさらに広がるでしょう。
施設内訪問看護に関するよくある質問(Q&A)
初めて施設内訪問看護を検討する方々が抱きやすい疑問点にお答えします。
働く前に気になる勤務形態から、夜勤やオンコールの頻度、ブランクがあっても大丈夫かなど、実際に多くの方が気にするポイントを確認していきましょう。あらかじめ知識を得ておくことで、入職後の不安を軽減できます。
ぜひ、自分が重視する条件を明確にしながら内容を確認してみてください。
①施設内訪問看護師の一日の訪問件数はどれくらい?
施設の規模や利用者数にもよりますが、1日あたり10件前後を訪問するケースが多いです。医療依存度やケアプランの内容によって訪問件数は増減します。
急な対応が必要な方がいる場合は、優先度をつけてスケジュールを組むなど、臨機応変なマネジメントが求められます。
②夜勤やオンコールの頻度はどの程度?
施設のシフト体制によって大きく異なりますが、日中から夜間まで常駐スタッフが配置されている施設では夜勤シフトの回数が少ない場合があります。また、オンコール当番制を導入しているところは、スタッフ間でローテーションしながら対応することが多いです。
自分のライフスタイルや負担を考慮しながら、求人情報や施設の体制を事前にチェックすることをおすすめします。
③ブランクからの復帰や未経験でも働ける?
施設内訪問看護は、多くの施設が研修制度や先輩スタッフによるフォロー体制を整えています。そのため、ブランクや未経験でも働きやすい環境を整えている職場は少なくありません。
実際に、一度臨床を離れていた看護師が経験を積みながら徐々に業務を習得し、活躍している事例も多く見受けられます。
まとめ
施設内訪問看護は、移動負担の少なさや多職種連携のしやすさから注目を集める一方、緊急対応や施設の独自ルールなども考慮に入れる必要があります。
さまざまな背景を持つ利用者に対して包括的なケアを行ううえで、看護師の専門知識や迅速な判断力、コミュニケーション力は欠かせません。施設内訪問看護だからこそ経験できるチーム連携のメリットがある一方、急変への対応やオンコールなど独自の負担もあるため、あらかじめメリット・デメリットを十分に理解しておくことが重要です。
今後のキャリアとして施設内訪問看護を検討する方は、施設の方針や勤務体制を比較検討し、自身の目指す働き方に合った職場を選ぶと良いでしょう。