看護師に求められるマルチタスク力とは?基礎から学ぶ重要性と課題
2025/06/18
投稿者:編集部
[看護師に求められるマルチタスク力とは?~基礎から学ぶ重要性と課題~]
看護師として働く現場では、同時に複数の業務をこなす『マルチタスク力』が欠かせません。患者対応から記録業務まで、多岐にわたる作業をスムーズにこなすことで、適切で安全な看護を提供できます。しかし、人間の脳は本来マルチタスクに弱いと言われており、その点で葛藤を感じる看護師も少なくありません。
この記事では、看護師に求められるマルチタスク力に着目し、その背景や苦手意識を感じる原因、対処法、そして職場選びにおける重要な視点を整理していきます。自分に合った方法でマルチタスクと付き合い、効率的に業務を進めるヒントが見つかるはずです。
マルチタスクが看護師の現場で必要とされる理由
看護の現場では常に複数の業務が同時進行し、患者の状態変化にも柔軟に対応する必要があります。
例えば、患者のバイタルサイン測定中にナースコールが入り、別の患者の点滴時間調整が発生することは日常茶飯事です。一度に複数の指示や業務が重なるため、場当たり的に動いていてはミスや見落としが生じるリスクが高まります。安全かつ迅速な看護を行うには、常に優先度を考慮しながら同時進行するタスクを管理する能力が欠かせません。
また、複数の患者を受け持つ看護師にとっては、コミュニケーション能力や判断力も大切な要素となります。医師や他職種との連携、家族からの問い合わせへの対応など、多角的に状況を把握する力が求められます。これらのスキルをバランスよく発揮するために、マルチタスク力が求められるのです。
看護師がマルチタスクを苦手と感じる主な原因
業務の突発的な変更や人間の脳の特性から、マルチタスクが苦手と感じる要因を見ていきましょう。
看護の現場は常に変化が絶えないため、心身への負担が大きくなりがちです。さらに、不規則な勤務体制や夜勤など、集中力を保ちにくい状況も実務を難しくしている側面があります。こうした現場特有の要因と、脳の構造的な限界が重なり、マルチタスクに対して苦手意識を持つ看護師が多いのです。
病棟業務における想定外の多さ
急な患者の状態変化や新たな検査依頼など、想定外の業務が頻繁に発生するのが病棟です。予定していたタスクが中断されることで混乱やストレスが増し、結果的にマルチタスクを苦手と感じる原因につながります。日々の業務スケジュールを立てても、実際はその通りに進行しないことが多い点に難しさがあります。
人間の脳は本来マルチタスクに向いていない
脳科学の観点では、人間の脳は複数の事柄を同時処理するのが得意ではありません。一時的に注意を切り替えながら対応する形になるため、集中するポイントが増えれば増えるほどミスや効率低下を招きやすいのです。一度に複数業務を行う中で見落としが増える場合は、脳の構造的な限界にも配慮する必要があります。
マルチタスクが苦手な看護師へ:対処法と優先順位の考え方
マルチタスクを上手にこなすためには、優先順位と時間管理に対する意識が欠かせません。
現場での忙しさに埋もれてしまうと、どのタスクから手をつけるべきか悩んでしまうことも多いでしょう。こうしたときに重要なのは、患者の状態や業務の緊急度を踏まえた的確な優先順位づけです。さらに、必要に応じて周囲に協力を仰ぎながら、タスクの管理を効率的に進める姿勢も求められます。
優先度を見極めるタイムマネジメント
最初に患者の生命に直結するリスクがある業務から取り組むなど、優先度を段階的に整理することが鉄則です。タスク一覧を可視化して緊急性・重要性を判断することで、次に何をすべきかが明確になります。また、短時間で完了可能なタスクを先に終わらせるなどの工夫も効果的です。
チームで協力し合う業務分担のコツ
マルチタスクを一人で抱え込まず、同僚やチームで協力し合うことがミスの防止につながります。例えば、自分が手を離せないときに他の看護師やスタッフに患者対応を任せられるよう、日常的にこまめな情報共有を行うことが大切です。チームで助け合う風土がある職場では、個人の負荷が少なくなるだけでなく、業務全体の質も向上します。
マルチタスク以外のアプローチ:集中作業と業務簡略化のヒント
同時進行だけが方法ではありません。タスクを集中して取り組む方法や業務を簡略化する仕組みも有効です。
マルチタスクに過度にこだわると疲労やミスが増えるため、適度にシングルタスクの時間を取り入れることは大切です。さらに、ICTツールを積極的に活用して情報共有をスムーズにすることで、全体の作業効率を向上させられます。さまざまなアプローチを試して、自分に合った形で活用するのがポイントです。
タスクの見える化とシングルタスクの活用
タスクを書き出して視覚化することで、まずは今やるべきことを明確にする方法です。必要に応じてシングルタスクに専念する時間を確保すれば、集中力を高めて短時間で質の高い作業を行いやすくなります。こうしたマネジメントを継続することで、疲労やストレスの軽減にもつながります。
記録作業の効率化・ICTツールの活用
電子カルテやクラウド型の情報共有ツールを活用すると、記録にかかる時間や手順を減らすことができます。必要な情報が瞬時に共有できるため、チーム内で指示の伝達がスムーズになり、マルチタスク時の混乱が軽減されるメリットがあります。ICTを使いこなせば、マルチタスクの負担を軽くしつつ業務全体を最適化することが可能です。
職場選びで考えるマルチタスクの必要性と向いている働き方
マルチタスクが求められる度合いは、職場環境や看護の領域によって大きく異なります。
看護師としてのキャリアを考えるとき、自身がどの程度マルチタスクを得意とするかを見極めることが大切です。急性期病棟はスピード重視で沢山の業務を同時進行する場面が多い一方で、慢性期や訪問看護は比較的ゆったりとしたペースで一人ひとりの患者に向き合えます。自分の性格やライフスタイルに合わせて、どのような職場環境がベストなのかを検討してみましょう。
急性期病棟か慢性期・訪問看護か
急性期病棟では、病状が大きく変化する患者が多く、短いスパンで優先度を判断する力が必要とされます。一方、慢性期の病棟や訪問看護では、より長期的な視点で患者を支援し、じっくり関わる姿勢が求められます。自身が瞬時の判断を好むか、それとも腰を据えて一人ひとりと向き合うケアを好むかで、働き方の選択肢が異なるでしょう。
マルチタスクを求められにくい職場の特徴
特定診療科に特化したクリニックや小規模施設などは、業務範囲や患者数が限定されていることが多いです。こうした環境では、一度に複数の業務を同時進行する必要が比較的少なく、より集中して作業しやすい傾向があります。マルチタスクに苦手意識がある方や、ストレスを減らしたい方にとって、働きやすい選択肢となるでしょう。
まとめ:看護師のマルチタスクと上手に付き合うポイント
マルチタスク力は看護師にとって欠かせない要素ですが、むやみに抱え込まず自分に合った工夫を取り入れることが大切です。
看護師の業務には多様なタスクが含まれ、同時進行する場面も少なくありません。しかし、人間の脳が抱える構造的な制約や、想定外の業務が多い現場の特徴を理解し、一人で抱え込まず周りと協力し合う姿勢を持つことが重要です。自分に合ったタイムマネジメントや、ICTツールの活用などを取り入れながら、無理なく質の高い看護を提供していきましょう。